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がしかし、男の行動は予想外のものだった。
「ん。」
「…へ?」
顔面蒼白で固まっているあたしの前に、急に差し出された手。訳も分からず彼を見上げると、呆れたような表情で見下ろされた。
「償ってくれんだろ?」
…あぁ、なるほど、ここじゃあさすがにね。
脳内BGMはすでにドナドナだった。諦めて小さく頷き、差し出された大きな手に自分の手を置く。
けれどそれを確認した男はにっこりと笑うだけでどこかに行く気配もなく、ただ手を握っているだけ。
「…あの?」
何をしているのかというニュアンスでおずおずと尋ねれば、男はニッと笑い、握る手にぐっと力を込めた。
その瞬間、繋がれた手がぼんやりと輝きだした。
驚きのあまり声も出せずに振り払おうとしたのだが、なぜか自分の手なのに言うことを聞いてくれない。
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