総ての光を飲み込む深い坑

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マキシーンは何処からかサーフボード状のモノを取り出してその上に立った。 コレがマキシーンの「乗り物」なのだろう。 促されてサーフボードの上に乗る。 形状から硬いと思ったがプニョプニョと柔らかい。 見るとマキシーンの足も踝までめり込んでいる。 マキシーンの後ろで四つん這いになっている俺の手足迄めり込んだ。 感触が気持ちいい。 吸い付く様にぺったりとまとわりついているのだ。 マキシーンが言うには音速の数十倍と言う尋常でない高速で飛行するのできちんと固定しないと危険らしい。 坂の長さが長さだけに音速程度じゃ追い付かないのだろう。 手足を大体五センチ程めり込ませてマキシーンに準備完了の合図を送ると、サーフボードがフワリと浮かび上がった。   ………確かに物凄い速度だと思う。 顔や身体に当たる風は半端なく強くて、景色も凄い速度ですっ飛んで行く。 サーフボードから喧しい断末魔の絶叫が絶えてくれたら最高なのだが………。 「マキシーン!!この悪趣味な絶叫は何とかならないのかっ!?」 サーフボードから絶え間なく出る叫び声に負けない位の大きな声でマキシーンに尋ねる。 「無理だな!飛行機のエンジン音だと思え!!」 一蹴かよ。 飛行機よりは音が小さい(と思う)とは言え、絶え間ない断末魔の絶叫は正直いい気はしない。 マキシーンはサーフボードについての蘊蓄を披露してくれているのだが、俺はほとんど聞いていなかった。 サーフボードを持って帰れるなら話は別だが無理っぽいしな。 自慢話も含んだ蘊蓄話が一段落したのを見計らって俺はさらに詳しく坂の周辺の事を聞いておいた。 恐らく坂の頂上の大穴迄辿り着けば現世に戻れると思うのだが、何となくこのままでは済まない様な気がしてならない。 根拠はないんだけどな。 変な蘊蓄は兎も角、辺りの情報を仕入れるのは有意義と言えるだろう。 マキシーンの奴が勢い余って大穴に堕ちた後の事迄説明してくれたのが蛇足だろうか。 大穴に堕ちる=死亡確定である以上、無駄知識ではあるのだが意外とすんなり頭の中に入っていった。 心の何処かで必要な知識であると認識しているのかも知れない。
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