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飛行時間は一時間程だろうか、坂の頂上に巨大な坑がぽっかりと空いている。
これが黄泉津比良坂の終点の黄泉津大穴なのだろう。
何故か烏丸君が太陽の様な笑顔で手を振っているのが見える………。
何だか物凄くタチの悪い上に無駄に手の込んだ悪戯な様な気がしてきた。
つーか、何でいるんだよ!?
凄く驚いた顔をしていたのだろうか、マキシーンが微妙に気を使いながら頂上に降りる。
何が何だか判らないまま烏丸君と対面だ。
確かに烏丸君に問い詰めたかったが、今迄の情報から鑑みて此処にいるのは想定外だ。
もしかして烏丸君は人知を超えた特殊能力でも持っているのだろうか?
「早かったですね、ヰヌヲさん。
半日程度で辿り着くとは思っていませんでしたよ」
地面に降りて苦労してサーフボードから足を引き抜きながら烏丸君の全く気持ちの籠もっていない声を聞いた。
「色々と聞きたい事はあるんだ。
どうやって此処迄連れてきたのかとか、何がしたいのかとか、君は何物だとか、何故俺なのかとかな………。
まず、何故君が此処にいる?」
「内緒です」
無表情で言い放った。
有無を言わさぬブッた斬りっぷりだ。
「最初の話だと此処がゴールなんだよな?
さっさと帰してくれ」
「それなんですが、残念ですけどヰヌヲさんには坑に堕ちて頂く事になりました。
向こうでこの封筒を提出して下さい。
中は見てもいいですよ」
封筒を受け取りつつ、俺の思考はしばしば止まってしまった様だ。
理解するのを拒否している俺がいる。
「……………え?
なりましたって、坑に落ちたら死亡なんだろ?
帰れるアテはあるのか?
ないのなら断らせて貰うぞ」
「残念ですがヰヌヲさんには拒否権は一切ありません。
『あの人』の意向なので最早確定事項ですし」
「『あの人』って誰だ?
今ぶん殴ってやりたい奴ナンバーワンだぞ」
脇でマキシーンがガタガタ震えて頭を抱えている。
マキシーンにとって『あの人』とやらは凄い人物らしい。
烏丸君とのつながりがよく判らないのだがな。
少し考え込んでいる間にまた刺付き鉄球で殴り飛ばされてしまった。
絶妙なコントロールで坑に堕とされる。
無事に返って来れるといいのだが………。
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