坂を登ろう

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道は意外と曲がりくねっていた。 びっしりと途切れる事なく死者が並んでいるものだから曲がり角はとてもキツい。 今の俺の全速力は恐らく新幹線より遥かに速いだろう。 余りの速度の衝撃に駆け抜けた後ろの死者達が大きく揺れているのが時折見えたので、どうも音速に近いらしい。 そんな高速を一時間以上爆走しても全然疲れないのは、やはり異常だがもうどうでもいい事だ。 産まれて初めて生身でドリフトしたしな。 ドリフトして面白い様に死者達を跳ね飛ばすのに暗い楽しみを見出してしまいそうだ。 曲がり角をクリアした後、後ろを振り返ると跳ね飛ばした死者達が律儀に列を作るのはなんか愉快だ。 何時間も爆走しても一向に道は続いているし死者達の列は途切れない。 俺も詳しく知っている訳ではないが、確か黄泉津比良坂って百万里とも一千万里とも言われているんだよな。 とんでもなく長くて気の遠くなってくる。 ふと見ると死者の達が道を外れて行く。 眺めていると道から少し離れた洞窟に入っていく様だ。 凶々しい雰囲気でどうにも入ったら無事に済みそうにない。 どういう事か事情を聞こうにもコイツ等とはマトモな受け答えなんか出来ないし……。 ん? 洞窟の入口に何か変なのがいるな。 青っぽい肌の小柄な鬼……だろうか? 卑屈そうな顔つきでどうにも鬼のイメージからかけ離れているが、頭の天辺から角が生えているのだから鬼なのだろう。 コイツなら話が通じるだろうか。 少なくともこの坂に来て以来、最初に確認した明確な意志の光をその眼に宿した相手なのは間違いなさそうだ。 とりあえず話をしてみないと何にも始まらないだろう。 俺は小鬼に向かってゆっくりと歩いていった。
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