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  ふと壁に掛けられた 鏡の中の自分と目が合った。 蛍光灯の消された薄暗さの中で私は 一層青白く見えた。 その白の中に赤紫色の痣が首の位置で 手の形を残したまま強く主張している。 そこだけが妙に生々しく浮いた存在だ。   私の命を断ち切った決定的な痕なのに 決して嫌いではない。 千切れた首と胴体を繋ぎとめている様で 見ているとつい唇の端が持ち上がる。 少し古いホラー映画に出てくる怪物の 継ぎ接ぎだらけの縫い痕と 似たようなものだ。 わざとらしく滑稽で。 だけど自分も今や同じ類なのだ。 自らを嘲るような笑みに表情が染められた。 
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