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  急に怖くなって 椅子に置き去りにされたマフラーを手に取り 首に巻きつけた。 その両側を躊躇いなく引っ張る。 編みこまれた毛糸達が 首に触れているという感覚だけしか やってきてはくれなかった。   鏡が映すその姿が不気味で 絡まった操り人形を連想させた。 踊らされる操り人形は 壊れかけても糸を持つ者が飽きるまで 崩れ落ちることすら出来ずにいる。 「死体だから、これ以上死ねないんだ。」 無意識のうちに声になっていた。 考えてみれば当たり前のことだった。 殺されたそのときから この世界から消え去ったのに 中途半端に引き戻された。    
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