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厚い雲が空を覆い、今にも 雪が降り出しそうな天気だった。 風が素肌に痛いくらい鋭く吹き荒れる中、 下校中の生徒はマフラーに顔をうずめた。   ストーブの切れた理科室は寒く、 白い吐息が乾いた空気に溶けていく。 様々な物が満ちているこの世界で、 私が最期に見たものは 私の首を絞める誰かの腕だった。 筋ばったその細い腕には 脳の下した命令に従順に、 指先へと力が込められ 私の意識は力とは反比例に 霞んでは遠くなる。 朦朧としながらも恐れはせず 迫りくる死を確かに感じた。 私は死んだ。   首を絞められ、殺された。    
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