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壊れてしまった世界には
私以外の人がいた。
それも一人ではないのだと
話し声と気配で感じ取る。
会話の内容は、
聞き取る前に終わってしまった。
瞼を細く開かせると、
見慣れた天井があった。
私の住んでいた家だった。
重くだるい体を起こし、
周りの様子を窺う。
畳に腰を落とし、怯えて私から
目がはなせないでいる両親がいた。
顔を真っ青にして、
逃げ出しそうな雰囲気だ。
声も上げられないくせに荒い呼吸は
確かに聞こえる。
実の娘に対して、化け物を見たかのような
その反応が少し悲しかった。
「私、何しているの?」
返事など期待していなかったが、
乾きかけた口内から言葉を絞りだす。
母がしゃくりあげる様に
声にならない悲鳴を上げた。
父よりも、誰よりも
この状況を理解していないのは
私自身なのに
目線はまだ私に集中している。
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