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「どこかで…会いましたよね?」
聞いてきたのは、彼女のほうだった。
記憶をたどってみても、思い出せない。
さすがに『夢の中で会いました』とは言えない。
「いや…人違いじゃないんかな?」
「ご…ごめんなさい…たぶん人違い…うん」
最後のほうはまるで、自分に言い聞かせるように、彼女は答えた。
よくみると、彼女は、ボクと同じ高校の制服を着ていた。
「あれ?高校、いっしょじゃん。何年?」
「アタシ?高2」
「あ。いっしょ」
「ねぇねぇ。名前なんていうの?」
「オレ?百瀬和斗。キミは?」
「倉島菜緒。よくここ来るの?」
「いや、初めてだよ。いい曲だよね」
「うん…アタシ、たまに来るの。ステキな曲だよね。よかったら、またここで会わない?」
「いいよ。あ、そうだ、なんて呼べばいい?」
「“ナオ”でいいよ。じゃあ“カズト”でいい?」
「うん」
来週のこの時間、この場所で会う約束をして別れた。
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