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俺達が着いた頃、もうすでに何人か店前に並んでいた。よく見る顔だ。こいつらよっぽどの暇人なんだろうな、おそらく相手も同じことを思っているだろうが、そんなことを考えながら列に並ぶ。
しばらくすると店のシャッターが開き、並んでいた客はぞろぞろと中に入っていく。
「いらっしゃいませ。」
俺も軽く頭を下げながら続いて中に入って行く。
「じゃ、また後で。」
光はそう言って俺の肩を叩くと、店の奥へと消えて行った。
一緒に行くからといって、別に隣で遊ぶわけではない。
俺も入り口付近から順番によさそうな台を探し、席について開始を待った。
「ふぅ…」
腕組をしながら軽くため息をつく。
最近、この生活にも飽きてきた。趣味も仕事にすると楽しくなくなる、そんな感じだろうか。
それでも毎日ここに来るのは、光がそれなりに楽しんでいるみたいだし、何より仕事のない俺には唯一の収入源なのだ。今はどちらかと言うと、仕方なく朝から晩までここに居ると言ったほうが正しいのかもしれない。そう考えると、光が少し羨ましい。ここで楽しんで、いつも行く飲み屋にはお気に入りの娘がいて、それに何よりあいつにはバンドがある。たまに路上で歌ってるのは聞いたことがあるけど、小さなライブハウスで演奏することもあるみたいだし、今度CD作るって言ってたっけ。亜季も大きな仕事任されたって嬉しそうに言ってたし。何もないのは俺だけか…。
ふと気付くと周りが騒がしい。いつの間にか開店の時間が過ぎている。
「とりあえず頑張るかな。」
閉店までは席を立つことはない。その間食事もトイレも行かずに、ただひたすら台と向き合っている。言葉にすると、確かにしんどいな。飽きて当然か。
いつものように、閉店後は店前でお互いを待つ。
「まだ来てないみたいだな。」
今日は俺が先に出てきたらしく、まだ光の姿はない。
俺は向かいの店の階段に腰掛けて、光を待つことにした。タバコに火をつけて、軽くふかした後、ふと空を見上げる。もうすっかり暗くなっていて、星空が広がっていた。
「お疲れ。」
しばらくすると光が出てきた。
「どうだった?」
「ん~、まぁなんとかね。」
「じゃあ行こうか。」
ここから少し歩いた所にある居酒屋で夕食をとる。いつも同じ店に行くので、あえてどこにとは言わない。光も俺の言葉より少し先に歩きだしていた。
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