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アレから、数ヶ月たって少年の名前は明良ということ、年齢が22だということ(高校生だと思っていたから驚いた)、今行く宛がないことも分かった。そして携帯が鳴ると何時も悲しげな顔をしているということも、絶対にその着信に出ないということも。
一度しつこく鳴る携帯を見兼ねて出ないのか、と声を掛けたのだがアラームだと嘘を付かれた。これ以上詮索してはいけないのだと思った。…そして、何故か痛む胸にも気付いた。思えば出会った時の憂い顔を見て、笑って欲しくて。
芸能人だからと何時も綺麗な人が寄って来たし、性欲だって、ソイツらを気分的に選んで発散していた。
だから余計に自分の気持ちが分からなかった。お世辞にも綺麗と言えない…言うなれば平凡な顔な明良を、自分が好きになるだなんて。
そもそも平凡以前の前に明良は男だったのだから。認めたくなんか無かった。
そう思えば思うほど深みにハマっていくことも知らずに否定していたのだが。
思えば、自覚し出したのは何時からだったのだろう。
大事そうに携帯を握り締める明良にイラついている自分に気付いた時か?
何時も笑顔でお帰りと出迎えてくれる暖かさに気付いた時か?
…それとも、笑顔を見たいと希った時あの出会いでもう…
今となってはもうなんでも良い様な気がする。
(好きだ)
そのことに嘘はない。だけど明良は他の奴を思っていることも俺は知っている。
明良が好きになる女はどんな奴なんだろうか?
そうやって自嘲の笑みを浮かべる。…自分の気持ちに気付いた時にはもう俺は失恋していた。
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