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イタリアに着き、やれ探索だのテンションが上がりぎみ(過ぎている)明良だったがとある人物が居た所為(これは推測だが)で開けた扉を締め、途端に表情を曇らせた。
その口から問われた名前はなんてことない、共演者の名前だった。
そしていかに自分が嫌な奴かを思い知る。
悲痛にくれるその表情から明良は日下部が好きなのだということが分かった。
そして、何かしら接点があるということ。今アイツの所為で傷付いて泣いているということ。…明良にとってはそんなこと言ってる場合じゃないかも知れないが、明良が男に嫌悪を抱いてないということ。
チャンスだと思った。
理由や二人の間になにがあったにしろ、上手くいってないことは確実、だったから。
泣いている相手を抱き締めている間中そんなことばかり考えている自分を厭だと思った。そして泣いている理由が日下部なんかじゃなくて、笑っている理由が日下部なんかじゃなくて、全部全部俺にむけてくれれば、と願った。
「泣きたい時は遠慮せずに言えよ?胸くらいなら貸してやるし、居場所くらいなら与えてやるから。いくらでも」
悲しんでいる明良にこんなこと言うのはずるいってわかっているけれど、だけど、付け込まずにはいられなかった。
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