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そして現場に着いて、翔松の出るシーンの撮影が始まった。暫くして尿意がやってきたのでトイレに向かう途中に
「…なあ」
この切なげに俺を呼ぶ声の主が腕を掴んできて、俺たち(スタッフたち)の宿泊していうとある部屋に連れ込まれた、というワケだ。
「返事しろよ、明良」
(俺なんかのことを覚えてくれてるなんて)(嬉しいけど)
溢れそうになる。汚い嫉妬も激しい恋情も、思い出しては溢れそうになってしまう。
(俺の名前を呼ぶな、)
「人違いだと…思います」
「俺がお前を間違えるワケない!…どうしていなくなったんだよ、明良。」
やめて、そんなこといわないで。うれしくてうれしくて。かんちがいしてしまいそうになる。
「あき…」
「違うんだ!!何もかも!住む世界も、感じることも、何もかもが違うんだよ!」
知らぬ間に涙が頬を伝う。
泣くつもりなんて、ちっともなかったのに。
「…疲れたんだよ、もう」
「明良…」
「お願いだから、」
お願いだからもう
(これ以上、君を、好きになんてなりたくないんだ)
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