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久し振りの碧海の体温に、どくん、と胸が跳ねる。
「お前は何も言わなかった。俺が帰らなくても、何も。帰ったとしても同じベッドに入ろうとしない。ソファで寝てるお前を見る度に苦しくなった。」
「そんなの…」
「知らないってか?当たり前だろ。何も言わなかったからな。」
(碧海がそんなことを思ってたなんて、思いもしなかった)
「ムカついて、余計に家に帰りづらくなって、」
「そんなの言ってくれたら」
「だけどお前も何も言わなかった。俺も今思ってるよ。思ってることを言ってくれたら」
(一緒、だったんだ…)
「…俺たちに足りなかったのは言葉だったんだな」
「ん…」
顎を柔らかく捕まれ、顔を後ろに向けさせれて、唇が降りてきた。
「ちょ…、碧海!」
「俺も、これからはちゃんと言うように努力するから…お前も言え。」
「うん、」
「好きだ、明良。離さない」
もう絶対に、と吐息で囁きながら再び唇が降りてきた。
□
「ただいま」
「…おかえり」
あれから3ヶ月後、俺は翔松のマンションを出て碧海のマンションへと戻ってきた。
言葉が足りなかった俺たちは、これからまたちゃんとやり直して始めようと思う。
…俺たち二人のこの家で。
*end*
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