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視界を覆い隠す程の凄まじい吹雪の中、少年は歩みを止めた。
目の前には、見た事もない飛竜。
……いや、飛竜かどうかすら定かではない。
竜というより恐竜のそれに近い頭部と、強靭な二本の前足。そして右目のあたりに十字の傷。
少年は背中の太刀を引き抜きながら軽く舌打ちをした。そして後悔する。
ーーーーーーホットドリンクをケチるんじゃなかった、と。
ハンターは収入も多いが出費も多い。
ホットドリンク一つでもなかなか金を取られる。
故に装備は登山用。戦闘用ではない。
しかも相手は見知らぬ飛竜。
ーーーーーーマズった。
♪ ♪ ♪
飛竜が飛び掛かる。
少年はなんとかそれを太刀で受け切った。一撃が重い。
「クソッ!」
痺れる体を無理矢理動かして、竜の右前足に太刀を振り下ろすが、
「ーーーーーーッ!」
弾かれて体制を崩してしまう。
そしてできた数瞬の隙を、飛竜は見逃さなかった。
丸太のような尻尾が少年の腹部を捉らえた。
「ぅぐっ!!」
衝撃が少年を襲う。
吹き飛ばされ、少年の体は深い谷の底へと落ちていったーーーーーー
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