優し過ぎた時

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『なっちゃんは天使みたいだね 綺麗茶色の髪 真っ白な肌 飴色の瞳 天使の歌声 ね?』 裕兄ちゃんは私に歌をせがむ 私は習いたての歌を歌う 重なる歌声 笑顔の裕兄ちゃん 『裕兄ちゃん 私 裕兄ちゃんのお嫁さんになりたいの』 子供心の精一杯 裕兄ちゃんは優しく優しく笑う 『なっちゃんが16歳になった時 まだ僕を好きでいてくれたら お嫁さんになってね』 優しく額にキスをしてくれた 約束は叶う 私は裕兄ちゃんのお嫁さんになる 嬉しい 嬉しい 嬉しい 早く大人になりたい 一日も早く いつもより早く私は帰る 学校帰りの大きなランドセルを背負いながら 私は急かされる様に 裕兄ちゃんの家に向かう 大好きな気持ちは募る 会いたい 優しく撫でて 今日も歌うよ 裕兄ちゃんの好きな私の歌声 裕兄ちゃん 裕兄ちゃん 裕… (あっ…居たぁ) 鈍い音 消えた裕兄ちゃん ぐしゃぐしゃの車 あれは…なに… 裕兄ちゃんのお母さんの声 なにか叫んでる 真っ白な私の世界 気がつくと私は病院で寝て居た 倒れた…から 学校帰り 裕兄ちゃんの家の前… たくさんの花 あれは裕兄ちゃんのくれた花 裕兄ちゃんは天使だった 空に帰ったから 胸が痛くて 声が枯れても泣いた あれからもうすぐ20年… 時々胸がまだ痛くて… 私はまだ裕兄ちゃに歌を届けます 彼が好きだと言ったその歌声で… これからも…
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