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「すみません、尾崎先輩。突然呼び出したりして…」
「いや、いいよ。バスケ部の連中にはもう挨拶済ませたし。それより何か話しがあるんだって?立花、お前」
180センチを越えた長身の尾崎先輩に正面から見つめられ、僕は一瞬言葉に詰まる。
至近距離で見上げると、改めて魅力的な人だと思う。
高い鼻梁にシャープな顎のライン。
意志の強そうな薄い唇。
少し肩に触れる髪はストレート。
痩せて引き締まった肢体に、紺のブレザーが映え、聡明さが漂う。
でも、瞳にはどこか捉えどころのない冷たさがあった。
僕が入学当時、先輩はバスケ部のヒーロー的存在で、その真摯な活躍ぶりに異性同性問わず、憧れる生徒は多かった。
僕もそのギャラリー達の一人。
気弱で、所謂真面目だけが取り柄みたいな僕の、
《理想》を全て具現化したような先輩に憧れるのは、至極当然なこと。
でもその姿を日々目で追ううちに、胸の奥で生じたものが単なる憧れだけではなく
《恋》だと気付いたのは、先輩の卒業式間近だった。
「あ、あの……」
「ん?」
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