プロローグ。

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暗い路地裏。 俺は女を抱き寄せた。 意識を失った女は、力無く倒れこむ。 そっと座り込ませ、牙を突き立てた。 脈打つ血が俺の喉を潤していく。 …まだ、足りない。 人間は脆い。 だからすぐ壊れてしまう。 …壊さないようにしなければならない。 規則的に呼吸する女を、そっと地面に置く。 …俺は口元についた血を舌で嘗め、その後味を堪能した。 未だ口内に薫る鉄の味。芳しい、極上の赤ワイン。 …まだまだ、足りない。 明るすぎる夜闇に向けて、黒い翼を羽ばたかせた。
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