自己責任

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駅の売店で新聞を買おうと寄ったのですが、中学時代の彼女が売り子でした。彼女は私を見るなりボロボロと泣き出して、BとDがそれぞれ死んだことをまくし立てました。   Bは卒業後まもなく、下宿の自室に閉じこもって首をくくったそうです。部屋は雨戸とカーテンが閉められ、部屋じゅうの扉という扉を封印し、さらに自分の髪の毛をその上から一本一本几帳面に張り付けていたということでした。鑞で自分の耳と瞼に封をしようとした痕があったが、最後までそれをやらずに自害したという話でした。   Dは17の夏に四国まで逃げたそうですが、松山の近郊の町で、パンツ1枚でケタケタ笑いながら歩いているのを見つかったそうです。Dの後頭部は烏がむしったように髪の毛が抜かれていました。Dの瞼は、閉じるのではなく、絶対閉じないようにと自らナイフで切り取ろうとした痕があったそうです。   このときほど中学時代の人間関係を呪ったことはありません。   BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。つまり、アレを覚えているのは私一人しか残っていないと、気づかされてしまったのです。   胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、家には誰もいませんでした。後で知ったことですが、私の地方は忌廻しと云って、特に強い忌み事のあった家は、本家であっても初盆を奈良の寺で行うという風習があったのです。   私は連れてこられたのでした。
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