「師事」

2/2
前へ
/79ページ
次へ
ファミレス自体始めての田舎者の僕は、それでさえ緊張してるのに出るってアンタ。 「俺が合図したら俯けよ。足だけなら見えるはず」 そんなことを言われて飯が美味いはずがない。 もさもさ食ってると、急に耳鳴りが・・・・・ 冷や汗が出始めて、手が止ると先輩が 「オイ。俯けよ」 慌ててテーブルに目を落した。 しばらくじっとしてると、ていうか動けないでいると 視線の右端、テーブルのすぐ脇を白い足がすーっと通りすぎた。 いきなり肩を叩かれて我に返った。 「見たか?」 リングの公開前だったが、のちに見ると高山が街で女の足を見るシーンがこれにそっくりだった。 僕が頷くと 「今のが店員の足が一人分多いっていう このガストの怪談の出所。  俺はまるまる見えるんだけどな。顔は見ない方が幸せだ」 なんなんだ、この人。 「早く食べろ。俺嫌われてるから」 俺もわりに幽霊は見る方なんだが、こいつはとんでもない人だとこの時自覚した。 そのあと空港へ向う山道の謎の霧だとか、先輩お気に入りの山寺巡りなどに連れまわされて、朝方ようやく解放された。 以来俺はその先輩を師匠と仰ぐことになった。 それは師匠の謎の失踪まで続く。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加