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彼女が上着を脱いで師匠の背中にかぶせる。
俺たちは無言で歩き続けた。どこかタクシーを拾える所まで行かなくてはならない。
やがて師匠が熱に浮かされたのか、半分眠りながらうわ言めいたことをぼそぼそと繰り返し始めた。
俺は、ともかくこれですべて解決したと安堵しつつも、『追跡』の続きが気になっていた。
廃工場についてからの見開き4ページ分で師匠の救出に成功しているにもかかわらず、その最後にはこうあったのだ。
心の準備が出来るまで次のページには行かないほうが良い。
このあと、いったい何があるというのだろう。
俺は師匠がずり落ちないように苦心しながら片手で『追跡』を取り出して、口にくわえたペンライトをかざす。
心の準備……
なんのためのだろう。
またドキドキしはじめた心臓を鎮めながら、俺はゆっくりとページをめくた。
彼がうわ言で女の名前を口にした途端、その背中に鋭利な刃物が突き立った。
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