「壷」

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「壷」

これは俺の体験の中でもっとも恐ろしかった話だ。 大学1年の秋頃、俺のオカルト道の師匠はスランプに陥っていた。 やる気がないというか、勘が冴えないというか。 俺が「心霊スポットでも連れて行ってくださいよ~」 と言っても上の空で、たまにポケットから1円玉を4枚ほど出したかとおもうと 手の甲の上で振って、 「駄目。ケが悪い」 とかぶつぶつ言っては寝転がる始末だった。 それがある時急に「手相を見せろ」と手を掴んできた。 「こりゃ悪い。悪すぎて僕にはわかんない。気になるよね? ね?」 勝手なことを言えるものだ。 「じゃ、行こう行こう」 無理やりだったが師匠のやる気が出るのは嬉しかった。 どこに行くとは言ってくれなかったが、俺は師匠に付いて電車に乗った。 ついたのは隣の県の中核都市の駅だった。 駅を出て、駅前のアーケード街をずんずん歩いて行った。
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