「壷」

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晩御飯のご相伴にあずかり、泊まって行けというので俺は風呂を借りた。 風呂からでると、師匠がやってきて「一緒に来い」という。 敷地の裏手にあった土蔵に向うと、宗芳さんが待っていた。 「確かにお前には見る権利があるが、感心せんな」 師匠は硬いことを言うなよ、と土蔵の中へ入って行った。 土蔵の奥に下へ続く梯子のような階段があり、俺たちはそれを降りた。 今回の師匠の目的らしい。 俺はドキドキした。 師匠の目が輝いているからだ。 こういう時はヤバイものに必ず出会う。 思ったより長く、まるまる地下二階くらいまで降りた先には、畳敷きの地下室 があった。 黄色いランプ灯が天井に掛かっている。 六畳ぐらいの広さに壁は土が剥き出しで、畳もすぐ下は土のようだった。 もともとは自家製の防空壕だったと、あとで教わった。 部屋の隅に異様なものがあった。 それは巨大な壷だった。 俺の胸ほどの高さに、抱えきれない横幅。 しかも見なれた磁器や陶器でなく、縄目がついた素焼きの壷だ。
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