「壷」

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「これって、縄文土器じゃないんスか?」 宗芳さんが首を振った。 「いや、弥生式だな。穀物を貯蔵するための器だ」 そんなものがなんでここにあるんだ? と当然思った。 師匠は壷に近づくとまじまじと眺めはじめた。 「これはあれの祖父がな、戦時中のどさくさでくすねてきたものだ」 宗芳さんは俺でも知っている遺跡の名前をあげた。 その時、師匠が口を開いた。 「これが穀物を貯蔵してたって?」 笑ってるようだ。 黄色い灯りの下でさえ、壷は生気がないような暗い色をしていた。 宗芳さんが唸った。 「あれの祖父はな、この壷は人骨を納めていたという」
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