88人が本棚に入れています
本棚に追加
「親指が2本になり、左右対象になったわけだ。どんな感じ?」
不思議な感覚だ。落ち着くというか。安心するというか。
普通に両手を合わせるよりも一体感がある。
そのまま上下左右に動かすと特に感じる。
「これは人間が潜在意識のなかで望んでいる掌の形だよ。
左右対象で、両脇の親指が均等な力で物を掴む。
僕はこんな『親指が二本ある幽霊』を何度か見たことがある」
「あれは俺だけに見えていた霊だったと?」
「多分ね。 たまにいるんだよ。生前のそのままの姿でウロつく霊も
いれば、より落ちつくように、不安定な自分を保とうとするように、
両手とも利き腕になっていたり、左右対象の6本指になっていたり・・・
本人も無意識の内に変形しているヤツが。」
師匠はそう言って擬似6本指で俺にアイアンクローを掛けてきた。
不思議な話だった。
そんな話は寡聞にして聞いたことがない。
両手とも利き腕だとか・・・・
怪談本の類はかなり読んだけどそういうことに触れている本には
お目にかかったことが無い。
師匠のはったりなのか、それとも俺の知らない世界の道理なのか。
いまは知りようもない。
最初のコメントを投稿しよう!