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薄明かりの中で一瞬振り返ってこっちを見た時、右頬に引き攣り 傷のようなものが見えた。 男が行ってしまうと僕は師匠をたたき起こした。 「頼むから鍵しましょうよ!」もうほとんど半泣き。 しかし師匠とぼけて曰く 「あー怖かったー。でも今のは鍵しても無駄」 「なにいってるんすか。アフォですか。ていうか起きてたんすか」 僕がまくしたてると師匠はニヤニヤ笑いながら 「最後顔見ただろ」 頷くと、師匠は自分の目を指差してぞっとすることを言った。 「メガネ」 それで僕はすべてを理解した。 僕は視力が悪い。眼鏡が無いとほとんど何も見えない。 今も間近にある師匠の顔でさえ、輪郭がぼやけている。 「眼鏡ナシで見たのは初めてだろ?」 僕は頷くしかなかった。 そういうものだとはじめて知った。 結局あれは行きずりらしい。何度か師匠の部屋に泊まったが 2度と会うことはなかった。
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