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少しがっかりしながら、3回に1回くらいは向こう側に出ることもあると付け加えた瞬間、師匠の体の揺れがピタリとおさまった。
「なんて言った?」
「いや、だからフェンスのこっち側の時と向こう側の時があるって話です。立ち位置が」
師匠は首を捻りながら、へぇえと言った。僕は大学の授業で習っている中国語のピンインのようだと、見当違いなことを思った。第四声だったか。下がって上がるやつ。
「物理的な実体を持たない霊魂にとってフェンスという障害物なんてあってもなくても同じだから、こっちか向こうかなんて大した違いはなさそうに思えるかも知れないけど……実体を持たないからこそ"ウチ"か"ソト"かっていうのは不可逆的な要素なんだ。場についてる霊にとっては特にね」
だから地縛霊って言うんだ。
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