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「…ま、とりあえずお家はいろっか?」
寒くなってきたから冷えちゃうね、という言葉と共に、魔法使いは拘束を解かれました。
そして大きな目をめいっぱい開きます。
「たいちっ!!おおかみっ!!」
そうです。
体を離して今日はじめてちゃんと見た幼馴染みの頭にはピンと立った耳があり、お尻のあたりにはフサフサの尻尾がついていたのです。
「へへっ。そうそう!!あおちゃんに負けないようにねっ。狼男でーすっ」
「…っわぁー!!すごいすごいっ!!」
またもや魔法使いの目はキラキラと輝き、ほっぺもすっかり上気してしまいました。
「ねねね、しっぽさわっていい?」
うずうずとした顔で尋ねながらも、小さな手はすでに長めの毛にのびていて。
「もう触ってるじゃんっ。…まぁいいけどさぁー」
優しい狼男さんは苦笑いで許可をするしかないのです。
「ぅわぁー!!ふわふわだねっ」
長々と触られていても、にっこり笑顔で言われては何も返せません。
ふわふわ
ぎゅっ
なでなで
「……~~っ」
「あっ!!」
なおも尻尾をいじくりまわされた狼男が、ついに声をあげようとした時、魔法使いが先手をとって叫びました。
「たいちっとりっくおあとりーと!!」
忘れてましたっと顔に張り付けて言われては、小学生ながらに2度目のため息をつくのを責められません。
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