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「たいち?お菓子ないの?」
「いや、あるけども…」
なんだかやるせない気分になります。
しかし、とりあえず今日こんな仮装をしているのも全てこの魔法の呪文とお菓子のため。
「はいっ、どーぞ」
季節限定の、かぼちゃの絵柄のお菓子セットをわたしました。
「おぉ~!!いっぱいだぁ」
結局袋ごとぎゅっと抱き締めて笑うのを見ると、気が抜けてしまったりして。
小さな魔法使いにはまわりを和ませる魔法が使えるみたいです。
「あーおちゃん」
かといって、ハロウィンの恩恵を一人で受けさせる訳にはいきません。
大きな耳をピンとのばして言いました。
「トリックオアトリート!!」
「ふぇっ!?」
「あおちゃん、僕にはお菓子ないの?」
どうやら自分が呪文を唱えられる側になる事は考えてなかったようです。
「えと、えと…」
右腕にはお母さんに貰ったキャンディーの入った籠がさがっているのですが、びっくりして忘れてしまったのでしょうか。
あげられるお菓子を探して真っ黒な目がきょろきょろと動きます。
「ないの?…じゃあ、イタズラしちゃおうかな~?」
「えぇっ!?」
「そうだなぁ、僕狼男だし…。魔法使いさんを食べちゃおうかな?」
にこーっと可愛らしく笑ったかと思うと、がおーっと勢いよくとびかかりました。
「…っぎゃーー!!こわぁいー!!しょーたーっ!!!」
バターンッ
「あっ、ちょっ、冗談だってばあおちゃん!!ちょっと置いてかないでよっ」
キラリと光った瞳に脅えた魔法使いと、それを追い掛けた狼男は転がるように大きなお家を飛び出して行きました。
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