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悠久の日々
年が明けて、バリニャーノ達は、九州から、畿内へ行く準備を始めた。
日本に来て、半年近く、九州で過ごした事になる。
セミナリオも完成し、日本人司祭の候補も決った。
九州にいる間、島井宗室、大友宗麟などから、畿内の情報もかなり入ってくる。また、ルイス=フロイスや、ロレンソ=了斎などといった、畿内中心に布教活動を、行っている者からも、情報が入る。
カブラルは、畿内行きを、反対しているが、バリニャーノは聞く耳を、持たない。
「どうしても、行かれるのか?畿内は、戦乱真っ只中ですよ。」
カブラルの眼鏡が光る。
「カブラル卿、宗室の話だと、内乱は終結したようだよ。あなたは、私が畿内に行くのを、何故反対したがる?」
バリニャーノは、書き物をしている手を止め、カブラルの方へ振り返る。
「そ…それは………。」
カブラルは言葉につまる。
「カブラル卿、これは、決定事項だ。貴方にも、堺迄は、同行してもらいます。それと………織田信長という、人物に会った事はありますか?」
カブラルは、バリニャーノの質問に、顔色を変える。
「………織田信長ですか?」
「そうです。織田信長です。ルイス=フロイスの話だと………
彼が内戦を終結させ、恐らくは、この国の次期国王と、なりそうだと…。」
カブラルは、そう言われ、やはり……と、いう顔をした。
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