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森 蘭丸
天正十年、六月一日
西暦1582年6月20日
本能寺にて……
辺りは、闇につつまれ、静寂というのに、相応しかった。
その日、弥助は、何故か、眠る事ができず、寝床から起き上がった。
蝋燭に火を、つけると、その灯りを頼りに、部屋の襖を開け、外を眺めていた。
外は、まだ暗い、月はないが、空には、天の川が輝き、星々は零れんばかりだ。
何もかもが、弥介にとって、順調であった。
それは、弥介の主君
織田 信長
という男の、おかげである。
第六天魔王
比叡山を焼き払い、一向衆などには、鬼と呼ばれた男も、弥介にとっては、神そのモノであった…
順調すぎる…
怖いぐらいに…
弥介にとって、苦難の連続だった、昔を振り返ると、つい、そう、思ってしまう。
自分の、今、置かれている状況は、実は、いつ覚めるとも判らない夢で、何かの拍子に、眠りから覚め、
元の生活に、戻ってしまうのでは、ないか………
あの、人間扱いされる事のない、憂鬱な日々へ……
大きな背中を、丸くしながら、弥介は、そんな事を、つい考えてしまう。
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