序文

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魔。 普通には存在しない物や者。 ならば、当り前の様に存在している魔物は、分類の時点から存在を否定されているとでも言うのだろうか?   私は木陰に座り、昔読んだ本の内容を思い出していた。   私は魔物と呼ばれる存在だ。   分類は稀少種、吸魔。 自分が魔物である事を初めて認識した時は衝撃を受けたものだが、魔物という分類自体『人間の役に立たない、人間ではない存在』という曖昧さの為、納得した。   私は吸魔。 魔力を生命活動の根幹とする種族の中でも異色。 他者の魔力を吸収する事で力を増し、寿命を伸ばす。 私にとって当たり前の行為は、他者には奇異に映る様である。   そして魔力を無限に吸収できるその特殊性のため、過去に出現した吸魔は、ほぼ必ず魔王として君臨している。   私はそんな面倒な事は御免だ。 自由気ままに旅をする方が性に合っているのかも知れない。   私は立ち上がり、平野に延びる街道を東に向かって歩き始めた。
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