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その武器屋は狭かった。
だが店は狭いが中々の品揃えである。
大小様々な武器が十数種類、それぞれ十本位ずつ陳列されている。
その一本一本が少しずつ形や重さが違う様で、自分の気に入った物を選びやすい様に陳列されている。
内心この店に入ったのは正解かも知れないな、などと考えつつ小剣の棚に近づいた。
実際に戦闘に使用するというより、山道を歩く際に道を切り開いたり目印を付けたり、ロープを切るのに使用したりする事の方が多い為、重さや切れ味ではなく頑丈かそうでないかが重要になって来る。
私は実際に鞘から抜いてみて、一つ一つ刃の部分を拳で叩いてみる選び方をしていた。
それで頑丈さがわかるわけでは無いのだが、気分の問題だ。
ふと、店内が薄暗くなる。
入口に誰か立っている為、日光が遮られた様だ。
私は手を止めそちらを軽く見遣る。
何かおかしい。
町民の普段着で腰に長剣は不釣り合い過ぎる。
武器屋の女主人は、客の姿に戸惑いつつも一応声をかけた。
「いらっしゃい…
何をお捜し?」
男は返事もせずに店内に侵入し、
突然長剣を抜き放ち主人に斬りかかった。
激しい金属音。
硬直する主人の目の前で長剣は受け止められていた。
私がとっさに手にしていた小剣で受け止めたのだ。
「いきなり何をする。」
私の問いに、男は小さく舌打ちすると、押し込んでいた剣を引き飛び退る。
硬直していた主人は喉の奥から絞る様に小さな声を出す。
「あ、ありがと…」
「礼には及ばん。
それより退がっていろ。」
私の言葉に、主人は大人しく店の奥の扉を開け、閉めると思いきや中の様子を伺い始める。
まだ些か不用心だが先程までよりは良い。
私は油断無く男に小剣を構えつつ問い掛ける。
「何のつもりだ?」
男は小さく呟く
「貴様には関係無い。」
そう言ってまた斬り掛かって来た。
狭い店内、その中で長剣を器用に使い上段から斬り下ろして来た。
武器の重さの差がある為、正直に受け止められる保障は無い。
私は左から来た斬撃を右下へと受け流す。
と同時に男は左足を一歩踏み出し剣を大きく引き、突きへと切り替えた。
私は背後の主人に当たる事を恐れ、右に躱しながら私の左を通過する長剣に、左手に握る小剣を叩きつける。
激しい金属音が鳴り、狙いの逸れた長剣はカウンターの腰板に突き刺さった。
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