宗教都市:メーヴェ・前編

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それから程なく騒ぎを聞きつけた兵士が三名駆け付けて来た。 野次馬を押し除け、店内に入って来る。   そして店内の状況を認めるなり、一人引き返して行った。 騒ぎの鎮圧の必要は無いと判断し、捜査に必要な道具を取りに行ったのであろう。 残った二人の内一人は遺体を調べ始め、一人が近寄って来た。   「騒ぎの原因は何だ?」 その口調は事務的であり、有りがちな横柄さは無い。   私は主人の用意してくれた椅子に落ち着き、断ったのだが押しつけられたお茶を持ったまま答える。   「わからん。 その男が店に来るなり彼女に斬り掛かったのだ。」 私は正直に答える。   「本当か?」   中年に差し掛かろうかという年令のその兵士は、主人の方を向き確認する。   「ええ、本当よ。」 主人は頷く。   「あの男をやったのはお前か?」 兵士は私に向き直り、顎で男を指しながら言う。   「違う。 無力化して捕らえる為努力したが、観念したのか自害した。 …止められなかった。 すまない。」 言って私は目を閉じる。   だが兵士の反応は予想と反する物だった。   「またか……。」 そう言って考え込む。   私は聞き逃さなかった。   「また、という事は同じ様な事件が他でも起きてるのだな?」   私の言葉を聞いて、兵士は自らの失言に苦笑する。 「参ったな…。 詳しくは話せないが、確かに最近不可解な自殺事件が発生してる。 だが他人に斬り掛かったのは今回が初めてだ。」   「そうなのか…。」   何か引っ掛かる。 あの男は何らかの目的で動いていたとしか思えない。 そしてそれは、最近多発している事件と合わせて考えると、死ぬ事自体が目的であり、それは他人でも自分でも構わないという結論が出る。   だがそれはおかしい。 集団で命を粗末にする事に何の意味があるというのだ。   私が考え込んでいると 兵士が再び話し掛けて来た。   「悪いが調書を取らなきゃいけない。 店の片付けは私たちでやるから、その前に状況の流れを詳しく教えてくれ。」   私は頷き、立ち上がると 最初小剣を選んでいた場所へと向かった。     …調査は日没までかかった。   博物館に行けなかった事は 言うまでもない。
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