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マレイアの家に帰り着いた時には、当然夜だった。
ミナも帰って来ており、
二人は夕食の最中であった。
珍しく遅く帰って来たものだからか叱られた。
叱られる理由がわからず尋ねると
『叱ってみたかったから』
らしい。
…理不尽極まりない。
外では聖母の再来と謡われているマレイアも、私の前では自然体だ。
些か自然体過ぎるきらいもあるが、そこは愛嬌であろう。
二人が落ち着いたのを見計らい、少年を除く今日の出来事を話して聞かせた。
兵士が口を滑らせた最近の事件の下りになると、やはりマレイアも引っ掛かる物があるのか難しい表情をする。
ミナにはやや刺激が強かった様で青い顔をしていた。
「ねぇポンちゃん…
あなたはどう考える?」
マレイアは私の目を真直ぐ見つめ、意見を求めて来た。
私はその目線を受け止め、一つ頷き返事をする。
「私の考えでは、二通りだ。
一つ目は自殺志願者の集まる組織の様な物がある事。
二つ目は儀式に対する生け贄である事だな。
だが二つ目の仮定は成立が難しい。なぜなら生け贄を捧げねばならぬ程強力な儀式をあのような普通の場所で行なう事自体が非合理的であるし、第一術者があの場に居なかった。」
私の見解を聞いたマレイアは一つ頷き、言葉を発する。
「…その両方かもよ?」
「両方?
…まさか。
大規模に儀式を行なう為に自分達全てを生け贄にして…という事か?
ありえん。
生け贄から儀式までの時間が開き過ぎではないか?
そして範囲はこの街全体に渡っている様であるし、仮説というよりも万が一に近いのではないか?」
それを聞いてもマレイアには何か確信めいた物がある様だ。
表情を変えないマレイアに、今度は私から意見を促す。
マレイアは一瞬迷った様だが、話し始めた。
「今朝本部の外であなたが話した内容覚えてる?
ほら、本部の地下に何があるのかっていう話。」
私はすぐに思い出した。
そしてその可能性に戦慄した。
「なるほど、だが、あれの正体を知らないのではなかったのか?」
「知らないわよ?
でもあなたがそんな顔する位の代物だって事はわかるわ。」
私は思わず顔を押さえていた。
「私はどんな顔をしていた?
今私は顔に出さない様にしたつもりだったのだが…」
驚いて尋ねる私に、マレイアは悪戯めいた笑みを返す。
「教えて欲しい?」
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