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話に一段落着いた時、私はミナに道具屋を紹介しておいた。
店主の親父と約束した以上
私には守る義務があるのだ。
そしてまた文無しになった以上、あの親父の世話になる事は確定事項である。
言及されて困るのは歓迎しない。
しかも明日早々に、である。
下手をすると『金使いの荒い奴だ』などという不名誉な印象を与える可能性も有るわけだ。
信用は大事なのである。
道具屋の紹介も終わり、私が明日何時頃行けば確実に道具屋が開店しているかについて考えていると、
マレイアと雑談をしていたミナが私に話を振って来た。
「明日の予定は有りますか?」
と聞かれても話を聞いていなかった為わからない。
だが私の予定などいくらでも融通が効く。
私は話を聞いていなかった事を謝りつつ、その旨を伝えた。
ミナはそれを聞いて少し笑い、嫌な顔をせず説明してくれた。
「明日の午後…
早速孤児院の屋根の修理をするんですけど、その材木を運ぶ手伝いが欲しいんです。
男の子達が張り切ってはいるんですけど、やっぱり人手は多い方がいいじゃないですか!
もちろん何か予定がお有りでしたら断って頂いても大丈夫なんですけど…。」
ミナは控え目に頼んで来た。
確かに博物館に行きたいのだが、博物館は逃げない。
そして疲れを知らない私は、肉体労働の要員として適任だ。
私はその頼みを快く引き受けた。
だが私の頭を過ぎる記憶。
盗みをしている少年と遭遇をする可能性が浮かんだ。
…それは気まずい。
しかし逆に、あの少年と再び接触するチャンスでもある。
ミナは午後と言った。
ならばそれまでにマレイアに相談して、少年にどう対処するべきか考えねばならない。
マレイアが一人で居る時を狙って話を切り出す必要があるな。
恐らく明日の午前は、早々にミナは準備に出掛けて行くであろう。
ならばその時マレイアを捕まえて相談すれば良いだろう。
今夜は、いや大概毎晩彼女達は、ほぼ同じ時間に就寝する為機会が無いと思われる。
問題は明日の朝まで何をして過ごすか、なのだが…
…そういえば読みかけの本が在ったはずだ。
確か太古に神から授かった宝石を集めている勇者達が、三つ集めたはいいが、四つ集めた魔王軍に追い詰められている所で、今朝は本を置いて薪割りをしに行ったのだった。
私は話の続きを楽しみにしつつ、書庫へと向かった。
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