宗教都市:メーヴェ・前編

38/49
前へ
/275ページ
次へ
朝日が昇り、明るくなった。   勇者達は、七つの宝石の力で魔王を封印しようとしたが、 邪神の力を借りた魔王には歯が立たなかった。 そこで勇者達も神そのものの力を借りる事にするのだが、 人の身で神の力を借りるには高い確率で命と引き替えにせねばならず、 しかも二つの祭器を集めねばならなかった。 一つ目の祭器は王都の宝物庫にあったのだが、 二つ目の祭器は山奥に住む遁世の賢者が所持しているという噂を頼りに 勇者達は死出の旅へと赴く。   という切りの良い所で今日は本を閉じ、 まずは井戸まで今日使う水を汲みに行った。 この次は薪を割らねばならない。   すっかり私の仕事になってしまったな…   このままでは朝食まで作らせられかねないとも思ったが、 よく考えると私は料理が出来ない為杞憂に終わりそうである。     予想通り、マレイアが先に起きて来た。   年のせいで眠りが浅くなったのではないか? と言った日は、半日口を聞いてくれなかった為、言及はしない。 学習能力は高いつもりだ。   私が薪を割っていると、外に用意してある洗面器の所まで、顔を洗いにマレイアが出て来た。   私はその時に、 昨日ミナにはあまり聞かせたく無い内容の出来事があり、後で相談したい旨を伝えておいた。   マレイアはその話の内容の予想はさすがにつかなかったらしく、 首を傾げながらも快諾してくれた。   これで、マレイアに対する伏線も完璧である。   私は薪割りを終らせ、暖炉の横まで割った薪を運んだ。   まだ秋とは言え、朝は段々寒くなって来ている。   私は暖炉に薪を組み、中央部分に手を当てると火を点けた。 さらに朝食時に必要な湯を沸かす為に、暖炉に付いている網の上に水の入った鍋を起き、鍋を温め始める。  そして火の番をする為に、暖炉の斜め前に椅子を置き、早朝届けられた新聞を開きつつそこへ落ち着く。   私にとって至福の時間だ。 やはり一仕事終えた後は達成感が違う。   暫くすると着替えを終えたマレイアが居間に入って来た。 そして部屋が暖かい事に感動する。   私は誇らしい気持ちになったが、自慢する程偉くも無い為自重する。   マレイアも、誉めてくれるのは嬉しいのだが、 『あなたって本当便利ね!』 というのはどこか間違っていないだろうか…。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3573人が本棚に入れています
本棚に追加