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マレイアの家に帰り着き、まだ時間に余裕がある事に失望した私は、本を読む程の時間があるわけでは無い事を確認してしまい、何か仕事が無いか探した。
仕方無く、
菜園の雑草の除去を行なっている内に正午になった様だ。
突如聞こえた笑い声に少し驚いて横を見ると、腹を押さえたミナが立っていた。
「随分楽しそうだな、
…?。
その割には一人か…?」
私はミナの笑い声からして、誰かと談笑しているものだと思ったのだが、なぜか一人なのにも関わらず腹痛を起こす程笑っている。
笑い茸ではこうはならない為その心配はしなかったが、不気味だ。
何か途切れ途切れに喋っているが
「駄目…」やら「反則…」
など要領を得ない。
私は背中を擦ってやり、落ち着かせると、理由を聞いてみた。
だがミナは何でも有りません。と答えるのみであった。
私は精神不安定を想定してみたが、ミナに限ってそれは無さそうである。
心配する必要はあるまい。
私はミナに、孤児院への案内を促した。
未だ荒い息をしていたミナも我に返り、初めて会った時の様に私を先導して歩き始めた。
つい最近の事なのだが、見慣れたせいかやや昔の様に感じる。
思えば内気そうな第一印象というのは、警戒していただけの様だ。
多少人見知りはするが、言いたい事はその場で言うというマレイアの方針をしっかりと受け継いでいる。
良い後継者を育成しているのだな。
マレイアの事だから無意識に、であろうが。
私がミナの行く末について思案する内に、宿舎の敷地を抜けて街へ出た。
そのまま教会領とも言うべき、街の東半分、その南の地域に向けて歩みを進めてゆく。
こちらは住宅地が中核を成す地域であり、城兵の目線がゆき届きにくい地域でもある。
だがその治安を守る為の、若い僧侶達による自警団が存在する為、思いの外治安は良い。
この街にすんでいる者で、僧侶に逆らう者はいない。
それは恐怖からではなく畏敬からである。
他の地域に比べて住宅の割合が多い地域ゆえ、自然と子供が道端で遊んでいる姿を良く見かける事ができる。
観光用の見処が無い為足を向けなかった地域だが、散歩には最適の景色だと思えた。
半刻程歩くと、住宅より頭一つ高い教会の屋根が見えて来た。
ミナの話によると、あの教会の裏に孤児院があるらしい。
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