宗教都市:メーヴェ・前編

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出て来た青年は、 崩れた煉瓦とその横のボール、泣き崩れているミナ、青年の登場にさらに慌てている少年達を見て、 大体の状況を把握した様だ。 そして大きく溜め息をつき、口を開く。   「はぁ… ミナさん、泣き真似してないで、そこの人を紹介して下さい? それから男子は崩れた煉瓦を片付ける様に! 割れてる物は捨てて下さい。 くれぐれも怪我しない様に気を付けてやるんですよ? あとボール遊びはしばらく禁止だと言ったでしょ? 後で男子全員説教ですから、そのつもりで。」   青年の言葉にミナは少し照れながら立ち上がり、ミナを取り囲んでいた少年達は呆気にとられる。   続いて言われる説教宣言に、重い空気が流れた。   事態の収束を見た少女達は各々家の中に入って行き、先程まで青年と綾取りをしていたのであろう幼い少女が、飛び跳ねながら青年に綾取りの続きを要求し始めた。   少年達は互いに文句を言い合いながらも煉瓦を片付け始め、三人組はと見ると、その輪に紛れてしまい解らなくなってしまった。   青年は綾取りの毛糸を少女に返し、家に入る様に言って頭をなでる。 少女は嬉しそうに笑うと走って家に入って行った。   私も自ら青年に近付き挨拶をする。   「私が来たせいかも知れない、 お騒がせして済まないな、 私はマレイアの家に厄介になっている旅の者だ。 君がここの責任者か?」   私がミナの紹介を待たず話しかけると、人好きのする優しい笑顔を返して来た。 そして私の話し方に嫌な顔をせず、丁寧な口調で返事を返して来る。   「はい、お話は伺っております。 今日はわざわざ手伝いに来て頂きありがとうございます。 私はミハイルと言います。 見ての通り牧師なのですが、布教活動もせずここで子供達を世話しています。 ここの責任者は、前の教会の神父様なのですが、お年を召してらっしゃるので私が代理人をやってます。 お名前を伺っても良ろしいですか?」   事前にミナが私の事をある程度話していたのであろう。 少年達を煉瓦の方に追い遣っていたミナがこちらに来る前に、大体の自己紹介が終ってしまった。   「マレイアからはポンちゃんと呼ばれているが… 何と呼んでくれても構わない。」   私の言葉にミハイルはやや困った顔をするが、 「ではポンさんとお呼びしても良いですか?」 と言い右手を差し出す。   私は構わない、と返事し 握手をした。
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