宗教都市:メーヴェ・前編

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その時ミナが私達の所に到着した。   「あら? もしかして自己紹介終っちゃいました?」   私は握手していた右手を離し、 「その通りだ。」 と答える。   ミハイルは苦笑すると、 「ミナさん、紹介位して下さいよ? ポンさんすみません。 まだお昼休みの時間なんです。 作業はもう少ししてから始めますので、それまで家の中へどうぞ。」   と言い私を先導して孤児院の中へと入って行った。 私もそれに続く。 ミナは何やら落ち込んでいる様子を一瞬見せたが、すぐに立ち直り私に続いた。   孤児院は、住んでいる子供達の学校も兼ねている様で、一階にミハイル用の小部屋と大きな台所。 その奥に浴場と手洗い。 食堂が無い代わりに教室があり、そしてまだ学校に通う年ではない子達が遊ぶ部屋が有った。 二階は恐らく子供達の寝室があるのだろう。   ミハイルは私とミナを連れて子供部屋に入り、椅子を三脚準備してその内の一つに座った。   そこへ先程綾取りをしていた少女が走り寄って来て甘え始めた。 ミハイルは笑って抱き上げると、膝の上に少女を座らせてあやしながら私達にも席を進める。   ここは良い所の様だ。 ミナが通い詰めるのも分かる気がする。 私は微笑ましいその風景を眺めながら席に着き、他愛もない話を始めた。 話を聞く限り、どうやら私が魔物であるとは聞かされていない様だったので、魔術師だという事にしておく。 嘘が嫌いなはずのミナが、なぜか何も言って来ないのが不思議であった。   しばらくすると、ミハイルは 「時間です。」と言って立ち上がった。 私とミナも立ち上がって三人で外へ出る。 ちなみに膝の上の少女はミハイルにあまり構ってもらえなかった為、飽きてどこかへ行ってしまった。   外へ出ると、もう休み時間では無いからであろう。 少年達は一ヶ所に集まって私達を待っていた。 ミハイルは少年達を注目させると   「それでは屋根の修理を始めましょう! 修理の仕方は今朝話した通りですからわかりますね? 絶対怪我しない為に皆真剣にやって下さい。 あと、皆さんを助けてくれる為に来てくれた魔術師のポンさんを紹介します!」  そして一言どうぞと勧められたが、この手合いは苦手なので本当に一言 「屋根の修理はあまり経験が無いが、よろしく頼む。」 とだけで済ませた。
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