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「盗品を渡す…って!
何で知ってんだよ?」
言って睨み付けて来る。
その眼光は実年令以上に鋭く、
だが淀みの無い綺麗な視線の為、凄味に欠ける。
そして勘違いをしている様だ。
「盗品を売り捌く事が子供には難しい事は常識の範囲内だ。
ルジャン達については全く知らないからこうやって聞いている。
そう警戒するな。」
私の言葉に不請不請納得した様ではあるが、先程の質問で完全に警戒してしまったらしい。
私は順序立てて説明をする。
もう危険な真似をしてまで金を稼ぐ必要は無い事。
だがルジャン達の背後に居るであろう大人達は、大事な収入源であるルジャン達を手放さないだろう事。
そして私はルジャン達を解放しようと考えている事をわかりやすく説明した。
孤児院に高額の寄付があった事は、屋根の修理の話が出た時に子供達全員に話されたらしい。
「…だからもう辞めようぜ!
昨日みたいな事がまたあって捕まりでもしたら大変だし。
って仲間で話したすぐ後にあんたが来てさ、すげぇ慌てたんだぜ?
んでバラさないって言うから安心してたら…
『盗みは辞められない』かよ!
…どうすりゃいいんだ?
…あぁ!ちきしょう!」
ルジャンは突然の宣告に混乱している。
どうやら自分達でも辞める気は有ったらしい、だがそれは、
まだ世の中の暗い部分を知らない子供の甘い考えだと知らされて、とるべき行動が思いつかない状態に陥った様だ。
私はあの時と同じ様に、
しゃがんで目線を合わせると、
誠意を込めて説得する。
「そこで最初の質問に戻る。
お前達の背後に居る者の名前か、もしくは組織名を教えてくれ。
お前達に盗みを強要させぬ様、
私が『説得』して来てやろう。」
「…ホントに…?
いや!
無理だ!
あんたが殺されちまうよ!」
顔を歪め横に何度も振りながら私の身を気遣うルジャンを見て、私はこの子を守ろうと改めて思った。
私は彼の目を真っ直ぐ見つめたまま不敵に笑い、言い放つ。
「私は魔術師だ。
昼間私の魔力を見たであろう?
お前の目には頼りなく映ったか?
コソ泥ごとき恐るるに足らん。
私を狙うというならば返り討ちにしてやろう。」
私の覇気に圧され、ルジャンは額に汗を流しつつ一つゴクリと喉を鳴らす。
そしてついに私の説得に応じ、
背後にいる組織について話し始めてくれたのだった。
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