宗教都市:メーヴェ・中編

3/44
3573人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
私は冷静に対処する。   まずは私から見て、カイラスの左にいる女性の、ダーツの射線軸から外れる為と、 三対一を二対一まで減らす為、 右から来る相手の、さらに右まで一気に踏み出す。   未だ男達全員が素手で向かって来ている為闘り易い。   右から来る、短髪を立てた男の右拳を左掌で受け止める。 そのまま掴み、右手を添えて手首を握り。 相手の力を利用して反時計周りに一回転振り回した。 半周回った時にすでに足が浮き、男は情けない声を上げる。   正面と左から来ていた二人は、私が右に移動した為まだ対応し切れていない。   その二人が二手に分かれ、 私を同時攻撃する態勢が整った時、私により振り回されていた男が一周回って帰って来た。   二人の内、右側に居る痩せた男へ向けて、私は振り回していた男の手を離す。   二人はもつれあって、仲良く床に転がった。   手を離す直前、私が握っていた男の右肩からゴキリと鈍い音がしていた。   肩が外れたに違い無い。   手下三人の内二人を一時的に行動不能にする事ができた。 内一人は本日再起不能である。 しばらくグラスも持てまい。   手下三人の元気な一人、一番の大きな体を持つ男が、肩を前にして体当たりをして来た。   だが私を見ていなければ、その行動に意味は無い。   私は冷静に右に回避しようとした。   その私の胸元にすべり込む様に迫るダーツ。   私は驚き、とっさに右手でダーツを掴み取ってしまった。   …っ…!! 感じる衝撃。   私は男の突進を受け、数歩分後方に飛ばされた。   …不覚。   勿論私にダメージは皆無なのだが、相手に好き放題させる趣味は無い。   私は右手で掴み取ったダーツを振り抜き、 放たれた投げ矢は女の右肩に吸い込まれた。   女は悲鳴を上げて崩折れ、着ている赤いドレスは右肩の傷口から広がり始める黒に侵食されてゆく…。   私に体当たりを成功させた大男は、今度は私の動きを止めるべく掴みかかって来た。   両腕を広げる男に対し、 私は懐へと瞬時に潜り込む。 そして男の無防備な鳩尾に肘を打ち込み、前屈みになった男の顔面に対し容赦の無い膝蹴りを叩き込んだ。   仰向けに崩れ行く大男の陰から現れる影が一つ。   先程肩の外れた仲間に巻き込まれた痩せた男である。   その手には鈍色に光るナイフが握られて居た。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!