宗教都市:メーヴェ・中編

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カイラス達を兵士達に引き渡し、これで本人達の希望通り牢屋に入る事になるであろう事を確認すると、 私は詰め所から外へ出た。   外は日が沈み、 夜になってしまっていた。 早く帰らなければ。 マレイア達に何を言われるか…。   私は軽く溜め息など吐きつつ歩き出した。   いや、このまま帰ったら 恐らくマレイア達に迷惑がかかる事になるであろう。 まさかこんなに対応が早いとは、思っていなかった。   尾行されている。   こちらの住み処を探るつもりであろうか? 私の勘違いである可能性も考慮し、 一区画を一周歩いてみたが、 変化無し。   だがこれでこちらが尾行に気付いている事がわかったであろう。 私が大人しく家に帰るはずが無いと諦めてくれれば良いのだが…。     だが私の期待も空しく、彼らは尾行を辞めてはくれなかった。   もしかすると、私を襲撃したいのかも知れない。   そう思い始め、街の南西。 一番治安の悪い地域へと向った。   だが不思議な事に、尾行している二人組以外の気配が全く無い。 そして治安の悪い地域に近づいているというのに、距離を詰めて来る様子も無い。 一定の距離を保ちつつ、曲がり角は慎重に伺いながら尾行を続けて来る。   それは街の南西の一番南。 一番治安の悪い辺りに到着しても変化が無かった。   恐らく私の家を突き止める事を 最優先事項として、 他の事は一切するなと命令されているに違いない。   さて、 困ったものだ。   幸いまだ、ロープを購入しただけなので、金に余裕は有る。 ならば宿を捜して… …今の時間に受け付けて貰えるであろうか?   かれこれ二時間程歩き回っている為、今は深夜と言って良い時間である。   気が付くと私は無意識とは言え、風俗街に入り込んでいた。   そもそも私には生殖能力が無い為、無縁の場所だ。 いや、勿論この体を造形したのは私なのだから行為自体は不可能では無い。 だが無意味だ。 相手を喜ばせる事に終始する、というのならば多少意味は有るのかも知れないが…。   む?   それは名案だ。   私は早速近くに立っている派手な格好をした女性に話し掛け、一晩分の料金を支払う事により今夜の宿を確保する事に成功した。
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