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私は歩いた。
ここから近い繁華街を目指して。
繁華街に入ってしまえば、尾行を撒くのは容易い。
互いに飛び抜けて背が高いのならば見失う事は無いだろうが、そうでない以上どうしても目を離す一瞬が多くなるからだ。
だが私の目論見は外れる事となった。
なんと二人の尾行者は仲間を呼んでいたのだ。
しかもそれは、
尾行者ではなく、
襲撃者だったのだ。
それはもう数分で繁華街に着く、という地点であった。
私は周囲の異常に気付いた。
繁華街周辺の住宅地にしては…
いや、どこを捜してもこんなにも殺気に溢れる町並みなどあるわけがない。
私は繁華街へ向かう事の無意味さを悟り、殺気を纏う気配を引き連れたまま走り出す。
私の突然の行動にも、気配は遅れずに着いて来た。
どうやら統率はとれている集団の様だ。
広場に辿り着いた。
その中央付近で立ち止まり、振り返る。
私が今駆け込んで来た道から、明らかに素行の良くないであろう男達がバラバラと現れた。
彼らは待っていた私を見て
一瞬戸惑ったものの、すぐに私を囲む様に半円状に広がる。
広場には地元の住民が数名談笑していたが、トラブルの気配を察し逃げ出した様だ。
ありがたい。
これで人質を取られる心配が無くなった。
私は襲撃者である男達を数える。
十名居る様だ。
カイラス達を叩きのめしただけにしてはやや人数が多い。
ああ見えて組織の中では実力者だったのだろうか?
『赤い斧』の手の者に間違い無いであろうが、このまま睨み合っていても近所迷惑なので、私から口を開いた。
「大体予想はつくが…
一応聞こう。
なぜ私を狙う?」
私の問いに、私の視線を受けていた男が代表して答えた。
「あんたが予想してる通りさ。
何のつもりか知らねぇけどよ、
ボスの弟牢屋に入れといて無事でいられると思ってたわけ?
組織の沽券に関わるんでね…
あんたには死んでもらうよ?」
なんと。
カイラスは『赤い斧』のボスの弟らしい。
これ程私に執着する意味を理解した所で、男達は邪魔者の居なくなった広場を生かし、私を完全に包囲した。
これで逃げられない。
完全包囲は、
飛び道具を使用する場合愚かな作戦となるが、今回は全員が接近戦用の獲物を所持している。
そして十人の内五人が同時に襲いかかって来た。
やはり、よく統率がとれていると見て間違い無いな。
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