宗教都市:メーヴェ・中編

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正面、右前方、右後方、 左後方、左前方。 それぞれ一人づつ五人同時攻撃だ。   勇者達に追い詰められた魔王とはこんな気分なのだろうか。 とふと考えたが、 そんな下らない事を考えている場合ではない事を思い出し、行動に移る。   対多人数の戦闘は、 分断させて各個撃破が基本。 まずは動線の確保から。   私は迷わず正面の男に向かって走り込み、突いて来る小剣と擦れ違う様な飛び蹴りを放つ。 残念ながら私の方がリーチが長い為、私の靴裏が男の喉に食い込む方が早かった。 男は白目をむきながら後方に二転三転して止まる。 私はそれを見届けず、蹴った反動を利用して振り返り、 右前方から来て、私に長剣を振り下ろそうとしていた男の手首を掴んで剣を止めた。   そのまま右後方から来ていた男の方へ蹴り飛ばし、二人まとめて転倒させる。   そこへ迫る二本の剣。   私も小剣を抜き、 突いて来た一本は躱し、 振り下ろして来た一本は小剣で弾いた。 そのまま横に回り込み、剣を縦にしてすれ違い様に右から来た男の胸板を切り裂く。 斬られた事で動きを止めた男が邪魔をした為、もう一人の男はその男を周り込もうとした。 そのタイムロスを利用して 斬られた男の足を突き刺し戦闘能力を奪う。   これで二人。   周り込んだ男が長剣を振り下ろして来た。 私は軌道を見切って躱し、一歩踏み出すと小剣の柄で、男の頭部を激しく殴打した。 横向きに倒れ行く男は、 すでに意識を飛ばしている。   これで三人。   先程二人まとめて地面に転がした二人が起き上がり、憤怒に顔を赤くしながら斬りかかって来た。   さらに三人やられたのを見てとった残りの五人の内三人が攻撃に参加する為剣を抜いた。   …これは中々面倒だ。   私は二人組の長剣を躱し、一人は顔面に、一人は腹にそれぞれ拳と蹴りを叩き込んだ。 足をもつれさせる二人の首を、小剣を収めた両手で掴んで互いに頭を衝突させる。   先程二人纏めて転がされた二人は、気絶する時も二人組だったわけだ。   これで五人。   ここで残り全員が剣を抜いた。   内三人はすでに向かって来ている。 魔力を使うと手早く終わるのだが、手加減が難しく、下手をすると簡単に殺してしまう。 そして魔力は限りある資源だ。 無駄遣いは良く無い。   ここは多少面倒でも、全員叩きふせるしかあるまい。   私は小剣を抜き、構え直した。
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