宗教都市:メーヴェ・中編

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向かって来る三人。   中央から来る一人が突き、 両サイドから来る二人は切り、 そして突いてくる中央の一人はやや間合いを遅れさせて突撃して来る。   中々の連携だ。   私は向かって左の男に向けて間合いを詰め、長剣の根元に小剣を合わせる。   その男の右後ろから現れた男の突きを、剣を合わせている男を盾にして躱し、 そこを狙って斬り付けて来た三人目の斬撃は、右方向に側転して躱す。 すかさず剣を合わせていた男が斬り付けて来たが、 無理な体勢からだったため太刀筋が甘い。 私は即座に間合いを詰め、 その男の顎を掌底で打ち上げた。   脳震盪を起こしたその男の腹を、突きを外した仲間に向けて蹴り飛ばして時間を稼ぎ、 残る一人の斬撃を受け止めた。   その男の目を睨みつけながら足払いをかけ、転倒させる事に成功したが、 そこで戦闘に参加した二人が到着した為、追撃を諦め回避する。   先程脳震盪を起こした男はふらつきながらも回復し、状況は未だ好転しない。   私に蹴り倒された男が起き上がって、五対一の状況が確定してしまった。   私はこの時点であきらめた。   魔術を使わない事をあきらめた。   そして宣言する。   「そこまでだ! これ以上やるならば。 …。 命の保障はできない。」   だが男達は、私の警告を 命乞いだと勘違いしたらしい。   「何言ってんだ? 死ぬのはお前だよ!」   そういって斬り掛かって来る。   残念だ。   私は、 魔力による自律的な干渉により、 世界の因果律を局所的に書き替え、 魔力を可燃物と世界に錯覚させる。   そして放出した魔力は燃え上がり、五人の男達を飲み込んだ。   即座に恐慌を起こす男達。   私は魔力の放出を止め、 間合いを詰めると次々に男達の意識を狩り獲った。   三名程完全に火達磨になったが、 即座に消火し火傷は癒した為大事には至るまい。 だが髪と服は治せなかった為、見た目が大変な事になってしまっている。   そこは人の警告を無視した罰だと考えてもらうしかあるまい。   私は比較的軽傷な男を選び、縛り上げると、その男を担ぎ上げてその場を後にした。   無論その他の男達は放置だ。 後はどんな目に遭おうが、 自業自得に違いない。
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