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扉付近にいた男達を同じく雷撃で片付け、食堂と思われる部屋に侵入した。
予想通りそこは食堂であったが、調理場は無い様だ。
恐らく外の民家の一つで調理して運び込んでいるのだろう。
地下で調理するのは換気等の点で問題が有った為と思われる。
地下組織も苦労するものだ。
そしてこれだけ騒ぎが起きているにも関わらず、食事を続けている豪気な者が二名居た。
組織を侵入者から守らねばならぬ立場の者の態度としてはどうかと思うのだが…。
私が現れた事に反応し、二名は残念そうに食事を中断して立ち上がる。
一人は大剣を背負った戦士。
もう一人は魔術士の様だ。
「…なんだ。
騒がしいと思ってたけど…。
侵入者は一人なんだ…?
一人で来る位だから腕には自信が有るのかな?
…でも残念だね。
ここで君の快進撃は終わりだよ?
僕達の食事の邪魔をした罪は重い。
行くよ、リオール。」
魔術士の若い男が、そう言って
こちらに歩いて来ようとしたが、リオールと呼ばれた戦士は
未だテーブルの上を未練有り気に眺めていた。
「もう!
あいつを片付けてからゆっくりと食べればいいだろ?
何がそんなに不満なのさ?」
「いや…あいつを殺したらさ、
ほら…匂いがするだろ?
そんな匂いのする中でメシ食うのは嫌だなぁ…と。」
何とも緊張感の無い会話である。
食事を摂らない私には理解し難い感覚であるが、死体を見て喜ぶ人は常軌を逸しているという事はわかる。
魔術士は腰に手をやり、大袈裟に溜め息を吐くと、私の方を見遣り提案して来た。
「リオールがこんなだからさ。
場所変えていい?」
私は頷く。
別に時間制限があるわけではない為である。
首領も、本当に追い詰められない限り逃げ出したりしないであろう。
今頃部下から報告を受けて
高見の見物気分に違いない。
魔術士と戦士は、その言葉通り私の横を摺り抜けて部屋の外に向かう。
私は大人しくその後に付いて行った。
ロビーに戻ると、魔術士達の登場に私が倒されたと勘違いした男達が居た。
先程左の扉の向こう側に居た男達である。
皆揃って私の登場に意気消沈する。
確かに歓迎されるとは思っていなかったが、そこまで露骨に邪険にされると悲しい物がある…。
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