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二人組はロビーで立ち止まり、
周りに居た男達に命令する。
「ねぇ、ここに転がってる奴らをどっかにやってくれないかな?
こいつらもリオールに踏まれたくないだろうし?
僕にとっても邪魔なんだよね…。
ほら、味方巻き込むとボスが恐いからさ。」
その言葉に、ロビーに居た十人程の男達が渋々ながら動き出し、
倒れた仲間を食堂と逆の扉へと運んでゆく。
魔術士はそれを眺めながら時折指示を出し、
戦士はようやくやる気を出したのか、何やら準備体操を始めた。
先の魔術士の言葉ではないが、
腕に自信があるらしい。
その大きな体つきと言い、
柔軟な動きと言い、
かなりの実力を伺わせる。
魔術士の方も、出す指示は的確で場慣れしている。
口調は軽薄だが、もしかすると
どこかの兵士崩れかも知れない。
こんな所で組織の用心棒をする様な面子には思えないが…。
私の考察を余所にロビーの片付けは進んで行き、やがて負傷者を全て運び終えた。
作業を終えた男達は、部屋の隅に固まり見物する様だ。
魔術士はそんな彼らを邪魔そうに見遣った後、私の方を振り返り口を開いた。
「じゃあ準備も出来た事だし始めようか?
まずは自己紹介からね。
僕はネロ、魔術士だよ!
そしてこの大きいのがリオール。
短い付き合いになるとは思うけどよろしくね!」
「…大きいの…。」
リオールはネロを見つめ不満そうに呟く。
自分の紹介が適当だった事が不満なのだろうが、やはり緊張感に欠ける男達だ。
「…あれ?
そっちは自己紹介しないんだ?
まぁ、どうせお墓建ててあげる訳じゃないから別に良いのかな…?
でも一応聞かせてよ。
何で殴り込みしようとしたの?」
言って屈託の無い笑みを見せる。
その笑顔とは裏腹に、言っている内容は物騒だ。
本当の理由は教えられないが、
表向きの理由位は教えても構うまい。
「ボスの弟であるカイラスを牢屋に入れたら組織から狙われてな。
一々返り討ちにするのは面倒であろう?
だから直接壊滅させに来た。」
私の言葉に、ネロは呆れた顔をする。
「うわぁ…。
単純と言うか自信家と言うか…。
中々そんな考え方しないよね…。
…自信は有るの?」
そう言ってからかう様な表情をするネロ。
私は自信たっぷりに言った。
「戦ってみればわかる。」
私の言葉に、
二人の貌付きが変わった。
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