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沖田さんも、いつ血を吐いてもおかしくない程の病人なんだって、、。
知ってるつもりでした。
判ってるつもりでした。
前にも言ったと思いますが、普段の沖田さんは、いつもニコニコ笑っていて、口を開けば軽口、冗談ばぁっかり、、。
病気の影なんか、全然見えませんでしたよ。
だからねぇ、、多分、、いつの間にか、、ずっと
、、ずっと、、こんな毎日が続いて行くんだ。
そんな風に思っていたのかもしれませんねぇ。
あたしが、どのくらい呆然としていたかは、、わかりません。
随分と長い時間だったような、、ほんの一瞬だったような、、。
もう一度ね、あの咳が聞こえて、我に還りましたよ。
もうねぇ、慌てて沖田さんの所に駆け寄ろうとしたんですがね、、。
ちょっとでも近付こうとすると、沖田さんは、こんな風に片方の腕を伸ばして、こぅ、、、こんな感じで腕を振り回すんです。
血を吐いて苦しい筈なのに、どっからこんなって思う位の力でねぇ、、。
こぅされるから、、あたしなんかは、もぅ近くに行くだけで大変でしたよぉ。
「沖田さん!沖田さん!落ち着いて!!落ち着いてください!」
血を吐いて、きっと動転してるんだ、、。
そう思いました。
だから一生懸命、声をかけました。
やっとの思いで、肩口にすがりついて、
「沖田さん!沖田さん!!」
何度も呼びかけながら、肩を揺すぶりました。
その時にねぇ、沖田さんが何かうわごとの様に呟いている事に気が付いたんです。
「駄目だ、、ばぁさん。来ちゃぁ、、駄目だ!
感染(うつ)っちまう、、来ちゃぁ駄目だ!!」
目に一杯、、涙を浮かべて、、そう言いながら、あたしをね、、少ぉしでも遠ざけようとするんです。
血を吐いてね、、苦しい筈なのに、、。
誰よりも、自分が一番、辛い筈なのに、、それでもね、
弱音一つ、泣き言一つ言わないで、、。
『自分の事より、他人(ひと)の事』
なんです。
本当に、胸が締め付けられる思いでしたよぉ。
それでねぇ、つい口走ってしまったんですよ。
「大丈夫、大丈夫なんですよ!
あたしはねぇ、感染(うつ)らないんですって!
先生から、良順先生からお墨付きを頂いてるんですよ!!」
えぇ、嘘です。
そんな事、言われた事なんかありませんよ。
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