永い夜が明ける頃 その二

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「あぁ、婆さん。もう大丈夫だ。沖田の奴ぁは、もう大丈夫だ、、峠は、もう越えたよ」 そう言いながらね、こぅ、、こんな感じにしゃがみ込んで、肩の辺りをさするようにしながら、ゆっくり話し掛けて下さいましたよ。 そしてねぇ 「そうだ!せっかくだから婆さん、熱くて、渋いヤツを一杯、、いれちゃあくれねぇかい?」 なんて言いながらニコッて笑いかけられましてね。 その笑顔は、本当に柔らかくて、優しくて、暖かかったですよ。 その笑顔をみたら、不安な気持ちなんか、スッとどっかにいっちまいましたよぉ。 本当に不思議ですよぉ。 ちょっと前までは、身体中が強張って動けなかったのに、先生の声を聞いて、その笑顔を見て、さすって貰って、、。 それで、、えぇそれだけで身体が、すっと軽くなるんです。 「はい!」 って言いながら、気が付いたら小走りで母屋に向かってましたよ。
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